
住替えあるあるなんですが、
「自宅の売却では3,000万円特別控除を使って、新居では住宅ローン控除も使おう!」
お客様から相談されました。他社様の営業マンからもそのように勧められたとか。
・・・そう考えている方に、税金界から残念なお知らせがありますっ!
その2つ、お会計時に一緒に出せないクーポンです。
しかも、「今年は別々の家だから大丈夫でしょう」と思っていると、さらに危険。住み替えでは、売却と購入の年が違っていても併用できないケースがあります。
では、どちらを選べばお得なのでしょうか。
【住み替えの税金】3,000万円特別控除と住宅ローン控除は併用できない!結局どっちがお得?

結論からいうと、
売却益が大きい人は3,000万円特別控除、売却益が小さい人は住宅ローン控除が有利になりやすい
という傾向があります。
ただし、正解は売却価格ではなく、自宅を売って実際にいくら利益が出るかによって決まります。
※本記事は2026年7月時点の制度をもとにしています
そもそも3,000万円特別控除とは?
正式には「居住用財産を譲渡した場合の3,000万円の特別控除の特例」といいます。
自分が住んでいる家や、以前住んでいた一定の家を売却した場合、売却によって生じた譲渡所得から最高3,000万円を差し引ける制度です。所有期間の長さにかかわらず、一定の要件を満たせば利用できます。
ここで大切なのは、売却代金から3,000万円を引けるわけではないことです。
計算は次のようになります。
譲渡所得=売却価格-取得費-譲渡費用
課税譲渡所得=譲渡所得-3,000万円特別控除
取得費には購入代金や購入時の手数料などが入り、譲渡費用には売却時の仲介手数料などが含まれます。建物の取得費は、購入価格から減価償却費相当額を差し引いて計算します。
つまり、4,000万円で売れたからといって、4,000万円の利益が出たわけではありません。
「買った金額」と「売るためにかかった費用」を確認して、初めて利益が分かるのです。
住宅ローン控除とは?
住宅ローン控除は、住宅ローンを利用して新居を購入した人が、一定の要件を満たした場合に所得税などの負担を軽減できる制度です。
2026年入居の場合、基本的な控除率は、控除対象となる年末ローン残高の0.7%。住宅の省エネ性能や新築・中古の区分、世帯要件などにより、借入限度額や控除期間は異なります。控除期間は住宅によって10年または13年です。
例えば、控除対象となる年末残高が3,000万円なら、その年の計算上の控除額は、
3,000万円×0.7%=21万円
です。
ただし、住宅ローン控除は「21万円が必ず現金でもらえる制度」ではありません。
実際の減税額は、納めている所得税等の額、年末ローン残高、住宅の性能や借入限度額によって変わります。
併用できないのは「同じ年」だけではない
ここが住み替えで最も間違えやすいポイントです。
3,000万円特別控除を利用すると、原則として、新居に入居した年だけでなく、入居年の前2年と後3年を含む期間は住宅ローン控除と併用できません。
例えば、2026年に新居へ入居した場合、2024年から2029年までの間に旧居の売却で3,000万円特別控除を使うと、住宅ローン控除を受けられない可能性があります。
税金の世界では、
「売却は2027年、購入は2026年だから別件です」
とは扱ってもらえないのです。
住み替えの前後をまとめて判定されるため、売却契約や確定申告をする前に比較しておく必要があります。
結局どっちがお得?具体例で対決
hそれでは、「3,000万円特別控除選手」と「住宅ローン控除選手」に登場してもらいましょう。
以下の計算例では、旧居の所有期間が5年を超えており、通常の長期譲渡所得として、所得税・復興特別所得税・住民税を合わせた概算税率20.315%で計算します。長期譲渡所得は、所得税15%、住民税5%に加え、所得税額に対する復興特別所得税がかかります。
ケース1 売却益が1,800万円ある
3,000万円特別控除を使えば、課税対象となる譲渡所得は0円です。
特別控除を使わなかった場合の税額は概算で、
1,800万円×20.315%=約365万7,000円
つまり、ざっくりですが3,000万円特別控除による節税効果は、約366万円です。
一方、新居の控除対象ローン残高が3,000万円の場合、住宅ローン控除は初年度の計算上21万円。仮に残高が減らず、13年間すべて満額控除できたとしても、理論上は273万円です。
実際にはローン残高が減り、納税額によって満額使えないこともあります。
このケースでは、3,000万円特別控除が有利になる可能性が高いでしょう。
ケース2 売却益が200万円しかない
3,000万円特別控除を使った場合の概算節税額は、
200万円×20.315%=約40万6,000円
です。
住宅ローン控除が複数年にわたり受けられるのであれば、合計の減税額が40万円を上回る可能性は十分にあります。
このケースでは、住宅ローン控除が有利になりやすいと考えられます。
ケース3 自宅を売っても利益が出ない
売却価格から取得費と譲渡費用を差し引いた結果、利益が0円または赤字だった場合、そもそも3,000万円特別控除で消すべき利益がありません。
特別控除による節税効果は0円です。
新居が住宅ローン控除の要件を満たすなら、基本的には住宅ローン控除を優先して検討することになります。
判断するときは「3,000万円」ではなく「税額」で比べる
「3,000万円特別控除」という名前を見ると、住宅ローン控除より圧倒的にお得に感じます。
しかし、3,000万円は減税額ではありません。
比較するのは、次の2つです。
3,000万円特別控除を使うことで減る譲渡所得税
住宅ローン控除を利用した場合の全期間の減税見込額
まず旧居の譲渡所得を計算し、次に新居の住宅ローン控除額をシミュレーションします。
この順番が重要です。
取得時の契約書が見つからない人は要注意
「30年前に買った家なので、売買契約書がどこにあるか分かりません」
この相談は珍しくありません。
取得費が分からない場合、原則的な扱いとして、売却価格の5%を概算取得費にできる制度があります。例えば3,000万円で売却した場合、取得費は150万円です。
取得費が小さくなると、計算上の売却益が大きくなります。
その結果、
「ほとんど利益は出ていないと思っていたのに、税務上は大きな利益が出ている」
という事態も起こります。
昔の売買契約書、領収書、住宅ローン関係書類などは、住み替えを決めた段階で探しておきましょう。
3,000万円特別控除が有利になりやすい人
次のような方は、3,000万円特別控除を優先して検討する価値があります。
旧居の値上がりが大きく、多額の売却益が出る
新居の住宅ローン借入額が少ない
所得税額が少なく、住宅ローン控除を満額使いにくい
新居が住宅ローン控除の対象要件を満たさない
なお、旧居の所有期間が売却年の1月1日時点で10年を超える場合、一定の要件を満たせば、3,000万円特別控除と軽減税率の特例を併用できる場合があります。住宅ローン控除との併用はできませんが、売却益が3,000万円を超える人には重要な制度です。
住宅ローン控除が有利になりやすい人
一方、次のような方は住宅ローン控除を優先して検討しましょう。
旧居の売却益が少ない、または売却損が出る
新居の住宅ローン借入額が大きい
新居が13年間の控除対象となる住宅である
所得税等が一定額あり、控除を活用しやすい
旧居の取得費を証明でき、譲渡所得を低く抑えられる
ただし、「借入額×0.7%×13年」で単純計算した金額を、そのまま受け取れるとは限りません。ローン残高は毎年減少し、住宅区分ごとの限度額や本人の納税額にも左右されます。
住み替えで失敗しないための順番
住み替えを考えたら、物件探しだけでなく、税金の試算も同時に始めましょう。
おすすめの順番は次のとおりです。
旧居の査定価格を確認する
購入時の契約書や領収書を探す
仲介手数料などの売却費用を見積もる
譲渡所得と売却時の税額を計算する
新居の住宅性能と住宅ローン控除の対象額を確認する
両制度の減税見込額を比較してから申告方法を決める
特に危険なのは、売却益を計算しないまま、
「とりあえず3,000万円控除を使っておけば安心」
と確定申告してしまうことです。
特例を選んだ後に、「住宅ローン控除のほうが得だった」と気づいても、簡単にやり直せるとは限りません。
まとめ|お得なのは家庭によって違う
3,000万円特別控除と住宅ローン控除は、住み替え時にどちらも魅力的な制度です。
しかし、対象期間内は原則として併用できません。国土交通省も、住宅ローン減税と居住用財産の譲渡所得の特別控除は併用できない税制として案内しています。
判断の基本はシンプルです。
売却益が大きいなら3,000万円特別控除を検討
売却益が小さい、または赤字なら住宅ローン控除を検討
住み替えは「いくらで売れるか」だけでなく、売却後にいくら手元へ残るかが重要です。
査定価格、住宅ローン残債、売却費用、税金、新居の購入資金までを一つの表にして考えると、住み替え後の資金計画が見えやすくなります。
税額は取得時期、名義、居住状況、売却年、新居への入居年などによって変わるため、最終的な制度選択は税務署または税理士へ確認したうえで行いましょう。





