住宅ローン返済が安くなる?! 「残クレ」車だけじゃない。仕組み・メリット徹底解説

車の「残クレ」の仕組みを住宅に応用したもので、住宅金融支援機構が「特定残価設定ローン保険」を創設しました。

このローンは、通常の割賦返済とリバースモーゲージ(元金据置)を組み合わせることで、購入当初や老後の月々の返済負担を大きく軽減できるのが特徴です。

「特定残価設定ローン保険の概要のご案内」/住宅金融支援機構

特定残価設定ローン保険を利用した残価設定型住宅ローンはどんな仕組み?


住宅ローンではまだ耳慣れない言葉ですが、カーローンでは「残クレ」と呼ばれ、広く利用されているのが「残価設定型ローン」です。

これは、車を購入する際に、あらかじめ将来の下取り価格、つまり残価を設定し、車両価格からその下取り価格を差し引いた金額に対してローンを組む仕組みのことです。

では、なぜ住宅ローンにおいても普及が期待されているのでしょうか。

その背景には、住宅価格の高騰により、購入者が利用する住宅ローンの借入額が大きくなり、返済期間も長期化していることがあります。残価設定型住宅ローンを利用することで、子育て世帯などが毎月の返済額を抑えながら、長期的に安心して返済を続けやすくなることが期待されています。

もっとも、車と異なり、住宅は長期間利用するものです。そのため、将来の下取り価格をあらかじめ設定することは簡単ではありません。なぜなら、その後の経済情勢の変化や、住宅の維持・修繕状況などによって、資産価値が大きく変動する可能性があるためです。

売却時に残価を上回る価格で売却できれば問題ありませんが、残価を下回った場合には、その損失が課題となります。残価設定型の場合、借り手がその損失を補填する必要はありませんが、貸し手である金融機関が損失を負うことになります。

そこで、売却価格が残価を下回るリスクを国の保険で担保することで、金融機関が残価設定型の住宅ローンを提供しやすくする仕組みとして設けられたのが、今回の住宅金融支援機構による「住宅融資保険」です。

特定残価設定ローン保険を利用した残価設定型住宅ローンの仕組みとは!?

同機構では、これを「特定残価設定ローン保険」と呼んでいます。

この保険を活用した「残価設定型住宅ローン」は、通常の元利払いによる住宅ローンと、死亡時に元金を一括返済し、毎月は利息のみを支払うリバースモーゲージを組み合わせた仕組みとなっています。

それでは、資料をもとに「残価設定型住宅ローン」の詳しい仕組みについて見ていきましょう。

ここでは、マンションの担保評価額を融資額と同額の4,000万円と想定し、その担保評価額に30%を掛けた1,200万円をリバースモーゲージ型住宅ローン、つまり元金据置ローンとします。

そして、残りの2,800万円を通常の住宅ローンである割賦返済ローンとして、2つのローンを組み合わせて利用する形になります。

元金据置ローンについては、毎月の支払いが利息のみとなるため、当初の毎月返済額は、2つのローンを合わせて約9.9万円となります。

一方で、金利1.0%の割賦返済ローンで4,000万円全額の住宅ローンを組んだ場合、毎月返済額は約11.3万円となります。そのため、残価設定型住宅ローンを利用した場合のほうが、毎月の返済負担は軽くなるといえます。

ちなみに、住宅ローンの返済期間を長期化し、4,000万円全額を45年返済とした場合、毎月返済額は約9.3万円となります。この場合、毎月の返済負担は残価設定型住宅ローンに近づきますが、75歳以降の返済負担については大きく異なります。

なお、これらはいずれも金利上昇の影響を考慮していない試算です。

ただし、担保評価の方法や金利タイプ、適用金利などの詳細については、各金融機関が個別に定めることになります。そのため、必ずしもこの前提どおりになるわけではない点にはご留意ください。

ただし「残価設定型住宅ローン」を利用するには条件があります

まず、この制度を利用できるのは、特定残価設定ローン保険を活用して住宅ローンを提供する金融機関に限られます。

ただし、現時点では、この住宅ローンを提供している金融機関はまだありません。

次に、対象となる住宅については、長期的に品質が維持されることが期待できる「長期優良住宅」や「予備認定マンション」「管理計画認定マンション」※に限定されています。

※「長期優良住宅」とは、長期にわたり良好な状態で使用するための措置が講じられた優良な住宅として認定されたものです。長期使用に対応した構造や設備を備えていることに加え、維持保全の期間や方法が定められていることなどが求められます。

※「予備認定マンション」「管理計画認定マンション」とは、管理規約、長期修繕計画、修繕積立金などの管理計画が一定の基準を満たし、地方公共団体から認定を受けたマンションを指します。

また、利用目的については、自ら居住する住宅を新築または中古で取得する場合、もしくは借り換えを行う場合に限られます。

そのほか、融資額は1億2,000万円以下、申込時の年齢は70歳未満であることなどの条件も設けられています。

特定残価設定ローン保険を利用した残価設定型住宅ローンのメリットやリスクは?

これまでの仕組みからも分かるように、保険を活用した残価設定型住宅ローンの特徴は、住宅取得時の住宅ローン返済負担を軽減できることに加え、老後の返済負担も抑えられる点にあります。

また、死亡時や売却時に債務が残らないことも大きな特徴です。これにより、住宅の取得や住み替えを円滑に進めやすくなったり、高齢期の住まいを安定させやすくなったりするメリットがあります。

一方で、利息については、選択する金利タイプに応じて金利変動の影響を受けます。また、死亡時まで利払いが続くため、長生きするほど総返済額は増えていくことになります。

そのため、金利変動のリスクや、長生きすることによって総返済額が増えるリスクについても、あらかじめ理解しておく必要があります。

なお、残価設定型の住宅ローンについては、すでに移住・住みかえ支援機構、いわゆるJTIが提供しています。

ただし、今回の保険を活用した仕組みとは異なり、JTIが設定した残価設定月までは通常の住宅ローンとして返済し、設定月以降は新型リバースモーゲージへ移行するなどのオプションを利用できる仕組みとなっています。

もっとも、利用にあたっては、指定された住宅事業者、たとえばハウスメーカーなどの施工による長期優良住宅であることなどの条件があります。そのため、これまで利用できる方は一部に限られていました。

今後、残価設定型住宅ローンが普及すれば、恩恵を受けられる層も出てくると考えられます。

ただし、そのためには、国や地方公共団体の認定を受けた対象住宅が増えていくことや、利用できる金融機関が増えていくことが必要になります。

そのため、この制度が一気に広がるとは考えにくいものの、住宅ローンの選択肢が増えることで、ご自身のライフプランに合った住宅ローンを選びやすくなります。

今後の動向についても、引き続き注目していきたいところです。